術後の指示
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複数抜歯後
手術直後
- 創部をガーゼで覆い、1時間ほど噛んで圧迫します。その後、ガーゼは除去し廃棄してください。出血の持続や再出血が無い限りは、湿らせたガーゼを新たに当て直す必要はありません。
- 激しくうがいをする、ストローを吸う、喫煙、手術創に触れるなどはしないでください。このような行為は血の塊をはがしてしまうため出血が持続する原因となります。
- 処方された痛み止めは、患部に不快感を感じる前に服用してください。そのタイミングとは通常、局所麻酔が切れてくる頃になります。
- 手術当日は活動を制限し、運動・エクササイズも控えてください。2、3個重ねた枕を使用して頭を高くして横になる、またはリクライニングチェアなどに座り、ゆっくりしてください。
- 術後24〜48時間は、アイスパックを手術部位周辺から顔の外側に向かって貼用して腫れを最小限におさえます。
- ストローは、出血を増強させるため使用しないでください。初日は、熱い液体や食べ物を摂取しないでください。最初の数日間は、噛みやすさと飲み込みやすさの面で、非常に柔らかいものの摂取が推奨されます。
出血
術後には一定量の出血が予測されます。血がにじむ、血の混ざった唾液が見られるなどは、術後12〜24時間中は異常ではありません。出血が多い、または持続するときには、口腔内の古い血の塊をそっとすすぐまたは拭き取るなどして除去し、湿らせたガーゼを新しく創部に当ててさらに1時間噛んで圧迫します。適宜繰り返します。出血が続く場合は、濡れたティーバッグをガーゼと同じ要領で当てて圧迫します。お茶に含まれるタンニン酸が血液凝固を促進します。出血量が減らない場合は、対処方法について当院までお電話ください。
術後出血を最小限にし、治癒を促進するために縫合が行われます。術後1週間で縫合部の抜糸を行います。抜糸には麻酔や針は使用しません。ほんの1分程度で完了し、不快感は伴いません。早い時期で縫合が1つや2つほどけてしまっても心配はいりません。ほどけた縫合糸は口から除去し処分してください。
腫れ
腫れは大半の外科的処置後に予測されることで、程度は通常その処置・手術の規模に比例します。口の周りや頬・目・顔の外側が腫れるのは異常ではありません。これは手術に対する身体の正常で健康な反応です。多くの場合、手術翌日まで腫れはあまり目立たず、ピークは術後48〜72時間に訪れます。腫れや不快感はアイスパックを患部に直接貼用することで最小限におさえることができます。術後24〜48時間は、アイスパックを手術部位周辺から顔の外側に向かって貼用します。アイスパックは、20分間当てた後は20分間外してください。術後48時間を経過すると、アイスパックをしても特別な効果は得られません。その時点では逆に、腫れを速く軽減させるには温めることが有効になります。場合によっては、腫れが1週間以上続くことがあります。
痛み
処方された痛み止めは、患部に不快感を感じる前に服用してください。そのタイミングとは通常、局所麻酔が切れてくる頃になります。胃が空っぽの状態で痛み止めを飲むと吐き気が起こることがあるため、食事や飲み物と一緒に内服することが推奨されます。痛みどめを飲むと、ぼんやりしたり、物事に対する反応が鈍くなることがあります。内服中は車の運転や機械の操作等はしないでください。最もよい経過のため、飲酒は避けるようにしてください。アスピリンや、アセトアミノフェン(Tylenol®)またはイブプロフェン(Advil®またはMotrin®)等の市販薬は、適宜使用していただいてかまいません。術後の不快感は術後2〜3日目をピークに増強し、その後は日毎に回復していきます。もし4日経過しても痛みが続いたり、ひどくなったりするようであれば当院までご連絡ください。創部の確認が必要になることがあります。
皮下出血
場合によっては、腫れのあとに皮下出血が起こることがあります。血液が口や顔の皮下組織下でにじみ出て広がることにより、黒色・青色・緑色・黄色などの皮膚色の変化が起こります。これは術後2〜3日に起こり得る正常な現象であり、1〜2週間で徐々に消失していきます。
食事
栄養のバランスがとれた食事は、術後の快適な生活・体力回復・不快の軽減・迅速な治癒に不可欠です。食事を抜くことはできるだけ避けてください。術後数日間は食事の摂取に制限が生じます。局所麻酔が完全に切れるまで食事はしないでください。術後24時間は、ジュースや牛乳、水などの水分をたっぷり飲むことから始めてください。最低1日グラス6〜8杯ほど(約2リットル/2クオート)の水分を飲むことで脱水を防ぐことができます。ストローは、出血を増強させ、血ぺい(血の塊)をはがしてしまうため使用しないでください。初日は、熱い液体や食べ物を摂取しないでください。初日は、柔らかいものや熱くないものをなんでも食べてかまいません。手術部位の反対側で噛んでください。その後はできるだけ早いうちに固形物を食べ始めて、普段の食事に戻るようにしてください。
口腔の清潔
手術翌日までは、うがいは一切しないでください。抜歯翌日の朝に、塩を入れたぬるま湯(グラス1杯のぬるま湯に小さじ½杯の塩)で、やさしくうがいすることから始めてください。数日間は1日に4〜5回のうがいを行います。特に食後のうがいは、刺激を与えずに食べかすを洗い流すのに有効です。歯磨きはできる範囲内で丁寧に行います。数日間は、創部周囲は避けて磨くことを忘れないように十分注意してください。さらに、抜歯から1週間後に開始する洗浄用のシリンジをお渡しすることもあります。
抜歯した部分には穴があきます。穴は翌月にかけて徐々に閉じていき、組織で埋められます。治りを良くするために抜歯部位は清潔に保ってください。
抗菌薬
患者さんによって、抜歯後の感染予防に抗菌薬が処方されることがあります。抗菌薬を処方された場合は、その錠剤または水薬がなくなるまできちんと飲みきってください。湿疹やその他好ましくない反応が出た場合は使用を中止し、当院まで速やかにご連絡ください。
吐き気・嘔吐
抜歯後に吐き気や嘔吐がみられた場合、内服薬も含め、30分間は何も経口摂取しないでください。薄暗い場所に座り、できるだけ動かないようにし、おでこに冷たいタオルなどをあてて冷やすのが有効です。軽度の吐き気止めには、市販薬のジフェンヒドラミン(Benadryl®)も使用できます。口当たりの良い水分(水、ジンジャーエール、7-Up®、スプライト)を15分ほどかけて、ゆっくり少しづつ飲むことから始めます。吐き気が軽減したら、固形物の食事と内服薬を再開します。吐き気が続く場合や、吐き戻さずにはいられないような場合などは、当院にご連絡ください。吐き気止めの処方や痛み止めの変更などを検討します。
活動
抜歯直後の活動量は、最低限に制限してください。横になった状態から立ち上がったり、体を起こしたりするときには、急な動作で行わないよう注意してください。急に立ち上がるとふらつくことがあります。立ち上がる前は1分ほど座り、その後ゆっくりと立ち上がるようにします。抜歯後1日ほどしてから普段の活動量に戻します。
日常的に運動をしている場合、術後はカロリー摂取量が普段よりも少なくなっていること、体は脱水傾向にあることを覚えておくようにしてください。運動やエクササイズにより体力がさらに低下する可能性があります。術後2〜3日は激しい運動は避けるようにしてください。
タバコは治癒を遅らせ、他の合併症を引き起こす可能性があります。タバコは最低でも術後7日間は控えるよう強くおすすめします。
もしこんな症状が起こったら…
ドライソケット
抜歯した場合は常にドライソケットが起こる可能性があります。抜歯4〜6日目、つまり痛み止めの内服が終了する時期に、耳の方向に放散するような、または夜中に目が覚めるようなひどい痛みが出た場合は当院までご連絡ください。ドライソケットの治療は簡単で、治療効果も良好です。処置が遅れないようにする必要があります。
知覚麻痺
唇やあご、舌の感覚が麻痺する状態が続いても心配はいりません。診察時にご説明したように、ほとんどの場合は一時的なものです。数日から数ヶ月続くことがありますが、永久に残ることはまれです。麻痺や気になる感覚が最初の24時間以降も続く場合は、当院にお知らせください。
発熱
外科的処置の直後に体温が若干上昇するのは異常ではありません。体温が普段よりも高い状態が続く場合や、発熱した場合は当院までお知らせください。
乾燥
唇はリップクリーム等で保湿してください。抜歯中に口が引っ張られることで、唇の乾燥やひび割れが、特に口角に生じやすくなっています。
のどの痛み
のどの痛みや、飲み込むときにのどが痛む症状は、のどに近いところでの腫れや炎症のために発生しており、異常ではありません。2〜3日のうちに軽減します。
硬直
あごの筋肉の硬直(開口障害)が起こり、口を開けにくくなったり、咀嚼しにくくなることが抜歯後数日間続くことがあります。これは外科手術後にみられる正常な反応であり、5〜10日で自然に回復していきます。ガムを噛むと筋肉の緊張がやわらぎ、症状の軽減につながります。イブプロフェン(AdvilやMotrin)などの抗炎症薬の内服も有効です。
骨の突起
口内の抜歯付近では、硬い突起に舌で触れられる場合があります。突起は歯根の取り残しではなく、空っぽになった歯槽の骨の壁です。通常は歯槽部の治癒が進むにつれて突起もなめらかになっていきます。軽減しない場合は、執刀医がなめらかにすることができます。
次のような症状がみられた場合は当院までご連絡ください:
- 4日後に痛みが強くなった
- 3日目を経過した後に腫れが強くなった
- 2日後にも体温が普段よりも高いまま、または発熱した
- 出血が多すぎる、コントロール不能
- 薬を飲んで好ましくない反応が出た
- 質問や不安なことがある